† 第十三節



独り言を呟く。空はとても赤く、高かった。

「ずっと気になっていた。なぜお前が、一二三の前に姿を見せたか」

それは、詩でも朗読するような気分で。屋上、ただ呟く。声は風に乗る。

「一昨日、一二三とお前は初めて対峙した」

それは、だれかへ向けての、しかし独り言。フェンスの影が、アミダくじのようだった。

「そして昨日、一二三とお前は再び対峙した。どちらの時も、六条賢一がいた」

しかしだ。この独り言をしかと聞いている者がいる。ここから見ても、夕日は西にそびえる大木ホーンタワーで縦断されていた。

「少し考えればわかる。お前は、六条賢一のいる場に現れる。特に、一二三と六条賢一が二人でいる時。まるで会話を潰すように現れる」

ドアノブを引きちぎった屋上の扉。

その横の壁に隠れているヤツへ、いよいよ呼び掛ける。

独り言は、終わりにしよう。思ったよりも早く、ことは片付きそうだ。

「いい加減、出てきたらどう。そこにいるのはわかってる」