夕日に燃える教室。光を受け、表情に影を落とす幹。

急にこないだの、一二三さんとの遭遇が、脳裏に蘇った。

汗が、首を気持ち悪く伝う。

「み……」

「賢一はさ」

僕の意思など最初から予定に入ってないとでも言うように、言葉が、遮られる。

「なにも知らなくていいんだよ。あたしと香澄さんがいるんだから」

「それはどういグっ!?」

瞬間、腹に衝撃が走った。

気が付いた時には、彼女の拳が僕の腹に沈んでいた。

黒い影のように立ち、見下してくる幹が、ゆっくりときびすを返す。

「それじゃね賢一。あたしはちょっと一二三さんに用があるんだ。少しおとなしくしていてよ。それに、ちょっと時間もない」

「み、き……!」

いったいどれだけの力で殴られたっていうんだろう。

女の子の一撃だけで、僕は腕一本動かせなくなっていた。

これが本当に、僕がよく知るあの幹の仕業だっていうのか。

口角を、よだれが垂れていく。

幹が、歩き去っていく。