幹が、どうしてそんな仮面を被るのか、理由がわからない。

「あのね賢一。こんなことは言いたくはないけど、君はあまり風間一二三に関わっちゃダメだよ」

「なんで、そんなこと言うんだよ」

「都合が悪いからだよ」
と、先と同じ。これじゃ、のれんに腕押しだ。

「幹、不必要素材じゃ推理はできない」

「推理されると都合が悪いからだよ」

「でもこれは君の言葉だよ。君は僕が必要としてる部分は答えてくれないの?」

「都合が悪いからだよ」


いたちごっこ。

「だから……教えてくれないの?」

「……」

黙り込む幹の笑顔が、夕日に照らされる。

気が付けばいつのまにか、教室には誰もいない。

おかしかった。

彼女はとても手際よく、帰り支度を整えていたと思う。

ということは、放課後になってからそんなに時間は経っていないはずなのに、こんなにも早く人が引けるだろうか。

これではまるで、この空気を作るためになにかか作用し、人を追い払ったかのようだ。