口の中を潤した一二三さんの目は、どこかずっと遠くを見ていた。

いや、睨んでいるのかもしれない。

街そのものを、丸々。

西の彼方には、大木ホーンタワーが日の光を反射させていた。

「今日の作戦」

「あ、うん」

「放課後になったら、繁華街へ向かう。このところあれは連日で街に出ているようだから、恐らく今日も。だから見つけ次第、一二三が討つ。お前は逃走された時の保険として、ヤツに『目』をつける」

「うん……」

ふと、気になる。

「あのさ、なんで、アイツはそんなことするのかな? 人を食い殺したり」

「おかしなことを言う。食事をするのに、崇高な理由なんてあると思う?」

「食事って……」

「言葉の意味の通り。あれが行っているのは、ただの食事。私達が今、口にしているに雲、もとは生きていた。食事に理由はない。普遍されている利用は後付け。本来あるのは、欲求だけ」

「……」

あまりに平然と言われて、ついうつむいてしまう。

なぜか、そんなの、ひどいと思ったから。