これを見たあとに隣を見ると……なんだか、交換してあげたくなる。

それくらい、彼女のお弁当は黒かった。真っ黒いなにかと真っ黒いなにかと真っ黒いなにかが、がさついていた。

真っ白いご飯が光って見えるとは何事だろう。

弁当箱のプリントが、ちょっと彼女にはかわい過ぎるんじゃないかと思う黄色いひまわり柄だから、余計に中身の黒さが目立つ。

毎日、こんなお弁当を食べているんだろうか、彼女は。

これは、彼女の性格如何でなくても、屋上へひとり逃げてきたくなるかもしれない。

「あのさ……それで?」

と、お弁当についてはあえて、あえてもう追及せず、訊ねてみた。

「そのたったひとりって、だれ?」

「その?」

「さっき言ったじゃないか。教会っていうやつの規制から、ひとりだけ逃れてるよなこと」

「言ったところで、アナタが知っているとは思えない」

にべもない言葉。

ふとこの時、一二三さんは相手を指す言葉を変えているんだと気付いた。

冷静な時には『アナタ』で、頭に血が昇っている時は、『お前』だ。

なにか、意味があるんだろうか。