溜め息ともつかない呼気を吐きながら、一二三さんは呆れた風に肩を丸める。

「……母上は……」

「?」

「母上は、家事全般が不得手。特に料理。にもかかわらず、一二三の弁当を作る。本当に不可解な人。今日はことさらに、ひどい」

貶しているくせに、一二三さんはまんざらでもない顔をしていた。

昨日、あんな風に真輝さんと衝突してたけど……実は、お母さんのことが好きなんじゃないかと思った。

好きだから、自分のことをわかってもらいたい。けれど上手く理解し合えない。

そんな、恋人に当てるにも似た、微妙な心理なんじゃないのか。

僕なんかが、一二三さんの心を理解できるわけがないけど、勝手にそんなことを思う。

思いながら、僕も包みを開けた。

姉さんの作る弁当は、カラフルだし、綺麗だ。ブロッコリーや、桜型にくり抜かれたニンジン。三種類くらいの肉。冷凍食品じゃないからすごい。