† 第十一節



一二三さんが言うには、昨日、僕が見た狼人間は、最近この街に幾度となく出没し、人間を食らっているらしい。

相当乱雑な性格で大食漢だと一二三さんは言っていたけど、それはあまりに妙な話だ。

あんな化け物が人間を食べてる……つまり殺してるってことは、それだけの人がいなくなってるっていうことだ。

それなのに、目立った事件にすらなってない。

僕はわりとニュースは見るほうだ。

だけどここ数日そんな報道を見た覚えはないし、あまつさえ、一二三さんはこの事件の始まりはつい最近じゃないとまで言う。

そんなに前から起こっていることなのに、事件のジの字も聞かない。

「知らないのも無理ない」

と、一二三さんは言った。

「教会という存在がある」