「いいか賢一、覚えとくといい。いつかお前はさ、自分の異能回路を理解するだろうよ。そいつはひょんな出来事からかもしれんし、自分の家族から聞くかもしれんし、なにかの出逢いがきっかけになるかもわからん。が、お前がお前を理解したその時、お前は超常や異能へ位置付けられる。つまり、†に近くなるんだ。忘れんな? お前は定義される。だからしっかり目を開いとけ。そのひたいにある目をな。いつかお前は、自分が何者かを理解するんだ」

そして僕はやっぱり、難しくてよくわからないと答えた。

でも、言われた通りに第三の目をパッチリと開いてまばたきして見せたら、苦笑されたのを覚えてる。

そういうこととは違うと。

だって、あの人の言うことを理解できなかったのも、仕方がない。

あの時の僕は十歳にもなっていなかったんだから。

でも、今この歳になって改めて、あの時と同じことを言われたら?

どう受け止めて、どう答えるんだろうか。

僕はいったい何者だろう。そう自問すれば正確に、六条賢一だ、と答える自分がいる。

けれどそれは、僕のほしい答えではなくて。