それなのに、

「行ってたの、どこへ?」

姉さんの眼差しは、まるで闇に光る彼岸花のように、鮮烈だった。

「どうしてしなかったの、連絡」

倒置法で話すから余計に質問の内容が強調されて、特別なことを聞かれている気がする。

ともすれば、まさか、僕がどこでなにをしてきたのか見知っていながら、あえて質問しているようにも。

僕はできるだけ平然と、ただ事実だけを答えた。

「ちょっと友達の家に寄ってきただけだよ。連絡しなかったのは、こんなに遅くなるって思わなかったんだ」

「なんで?」

「なんで、って……」

そんなド直球な追求をされるなんて、思わなかった。

姉さんが、

「行ってたの、どこへ?」

質問を繰り返しながら一歩、

「やってたの、なにを?」

玄関で立ち尽くす僕へ、

「会ってたの、だれと?」

じっくりと近寄り、

「答えて、賢一」

「……」

肩を、掴んできた。