もしも姉さんが僕のことを知っていたら、今まで教えてくれなかったんだ、「なぜ知ってしまったの?」というショックを受けるだろうし、逆に知らなかったら、僕が自分の存在を認識させられたのと同じように、なにかが真っ黒く塗り潰されるような衝撃を受けるだろう。

そう、だから、秘密なんだ。

僕が人間でないことは、僕が人間ではないと知ってしまったことは、ひたいの中で眠る三つ目以上の秘密。

姉さんには話せない。

純さんに言われてからというのが情けないけど、そう決意する。

だけどあの香澄姉さんを前に、僕がメンタル的なポーカーフェイスを保つことができるだろうか。

そればかりは、自信がない。

――自信が、ないのに、

「おかえり、賢一」

「た、ただいま」

玄関を入った僕はのっけから、姉さんと鉢合わせた。

空間と同化してしまうほど薄められた存在感。

そこにいるというのに、一声かけてもらわなかったらそのまま素通りしてしまいそうなくらい、邪魔にならない佇まい。