† 第十節



風間家での会談が終わったのは結局、六時を過ぎ、七時になろうかという頃だった。

あまりに遅くなってしまったために、純さんが車で送ってくれた。

その時、二人きりになった車内で、

「賢一くん、覚えておいてほしいことがあるんだけど」

「なんですか?」

「一二三はね、僕と真輝さんの大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な、それはもう大ッッッ切な一人娘なんだ。だからね――?」

「……は、はい……?」

「二度と、間違ってでも一二三を殺さないでね?」

そう言った純さんの顔は、いや本当は純さんこそが鬼なんじゃないかというくらい、怖かった。

向かいから走ってくる車のライトに半分だけ照らされた、屈託のない笑顔が、まさかこれほど人に恐怖を与えるなんて、信じられなかった。

だから僕は全力で、首を縦に振った。