こんなものだわ、で済まされる内容なんだろうか。

いや、すまされるかどうかじゃなく、すまさなければいけないんだろう。

少なくとも、当事者である僕には、真輝さんが言った通り『驚く』という行為は無駄にしかならない。

僕は、一二三さんを殺した。

どういうことになって僕が一二三さんを殺してしまったのか……

それは記憶が飛んでいるから、わからない。

ひょっとしたら、理由さえないのかもしれない。

僕の、この、化け物の力が暴発しただけなのかもしれない。

とにかく事実の過去として僕は一二三さんを殺した。

そして幸いにも、彼女の生命力が僕の力を上回り、一二三さんは生きている。

僕にとってそれは、喜ばしいこと以外も知るはめになったけれど……間違いなく、昨日からの恐怖、今朝からの疑問を解消してくれた。

手にしたままのカップに口をつけ、また漆黒を飲み込む。

黒いそれは僕の中へすとんと滑り込み、同時に、胸の奥でつっかえていたなにかも、腑に落としてしまった。