「一二三が死ななかったのは、ある意味ではアナタのおかげでもあるのよ。自分が人外であることも知らなかった愚図なアナタだから、その能力を十二分に引き出せずにいるの。存在証明のなされていない力は、蒙昧として弱いわ。だから、昨日偶然にも発動した力は一二三を完全に殺すまでにはいたらなかった。これは一二三の話を聞いての推測でしかないのだけど、アナタの三つ目はたぶん、千里眼というよりも邪眼ね」

「邪眼……」

なんて、禍々しい呼び名だろうと思った。

邪な眼――すなわち邪眼。

   チカラ
そんな目 を宿しているなんて……。

ああ、改めて、僕はいったいなんなのだろう。

ひたいに伝う汗は、なにも教えちゃくれない。

純さんが訊ねてくる。

「賢一くんは聞いたことがないかな? 睨んだだけで相手を石にしてしまったり、殺してしまうような化け物の話」

「ロールプレイングゲームなんかで……ありますけど……」

「うん。僕もゲームで仕入れた知識だよ。バジリスクとかバロールとか、そんな名前だったかな。あとメデューサとかだっけ、真輝さん?」

知らないわよ、と真輝さんは一蹴。コーヒーを一口啜った。