ばり……ばり……



それは、ものすごく恐ろしいことだと思った。

鼻も効かなくなる辛辣なニオイ。

口角にまとわりついた生ぬるい液体。



ばり……じゅる……



それは、ものすごく恐ろしいことだと思った。

もちろん、今も。

「う……ぉお……」

そう認識した途端に込み上げてくる嘔吐感。

胸の息苦しさに苛まれ、胃袋ごと引っくり返すように、口腔に含んでいたものを吐き出す。



びちゃびちゃり――

気色の悪い粘液が唇に糸を引き、地面に手をついた眼前には、真っ赤に歪んだ円形が醜く広がる。

臭いくさいクサイ物体。