昨日の出来事はやはり夢ではなかった。
昨日の事について全く蒼は触れてこない、莉奈はあの出来事が夢なのかとも思った。


昨日の事、言いたくないのかな‥?


そう考え、あまり深くは触れないでいた。


町に着いて蒼は、足元まですっぽり入る程の大きな布を莉奈に被らせた。
色鮮やかなオレンジ色の大きな花が刺繍された布。

「うわ‥かわいー!」

「この布は、この国で王に支えている女性が使うサランディアという衣装だよ。」

莉奈は昨日町を歩いた時に、自分の服装を気にしていたのを思い出した。


気遣ってくれてんのかな‥?


莉奈はそう考えた。
しかし蒼は昨日の令(れい)という男に、莉奈が見つかってしまうのを恐れていたのだ。

「ねぇ、この町に何しに来たの?」

早朝に起こされ、この町に急いだ理由をまだ聞いていない。

「着物を‥買いに来たんだよ」

そう笑顔で言った。
服を買いに行くのにあそこまで急ぐ事があったのだろうか‥

「別に早起きしなくてもー」

莉奈が苦笑いでそう言うと、蒼は先程とは違い真剣な顔で莉奈に向き直った。

「昨日莉奈に怪我をさせてしまって‥本当にごめん。」