駅までの道中、早紀の勤めるビルの隣、一際綺麗な本社ビルから姿を現したのは、同期の戸塚翠だった。


女性の同期はお互いだけと言うことで、2人はとても仲が良い。


駆け寄って声を掛けた早紀を見て、翠はテンションを上げた。


「早紀ー!お疲れ!」

「お疲れさま!みどりちゃん今日は早いね!」

「そう!やっと決算終わったの~」


翠は本社スタッフの中でも過酷だと言われる管理部に所属している。
この頃は決算業務に追われて残業続きだったようだ。


「早紀は相変わらずマイペース?」

「んー……そうみたい?」

「なんではてなが付くのよ」


「自分じゃわからないんだもん……部長が言ってたってだけだし」

「早紀らしいっちゃらしいよね」


ケラケラと笑われて、早紀もつられて笑い出す。

翠といると、気にしてること、辛かったことなんかが、何でもないように思えるから不思議なのだ。