その日は、お気に入りのスカートに、お気に入りのパンプス。

スカートが舞い、パンプスがリズムを刻む。それは早紀の心を躍らせてくれた。

誰もいない階段で、ゆっくりと1回転。

ふわりと膨らむスカートにコツン、と踵を鳴らして、そっと階下のフロアへ足を進めた。


一段一段スカートの動きを楽しんで、廊下へ続く扉に手をかけたとき、背後に人の気配を感じる。

扉を引きながら振り向くと、その人は戸に手を添えて、早紀を見つめていた。



「あ……、ありがとう、ございます……」


「いえ」



促されるままに進み出ると、その人は早紀とは反対のフロアへ行ってしまったのである。