「強引だったな、ごめん」

そう言って肩口に顔を埋めると、首筋を喰む。
それって反省してる? と思いながらも口は開かず、ううんと首を振った。

「いきなり『契約破棄』なんて言うからさ、かなり焦ったと言うか……」

それは何となく分かっていたけど……

「えっと……キス……は、嫌じゃなかった……です」

私、何言ってるんだろう……。
何だか照れくさくて敬語を使ってしまう。
自分の気持ちをどう説明しようか迷っていると、私を包んでいる腕が離れた。そして今度は両方を掴まれると、じっと見つめられてしまう。
私の心を探ろうとするその瞳から、逃げるように目をそらした。

「ちゃんと俺の目を見て」

甘さの中にも強さを含んだその声に心臓が跳ね、言われるがままに目を戻す。
二人見つめ合うだけで、何も話さないこと数分……。
もしかして遼さん、私から何か言い出すのを待っている?
いつまでもこの状態は厳しい。

「あ、あの、遼さん?」

「何?」

「契約の件だけど……」

遼さんの目が期待の眼差しに変わり、優しく頷く。

「破棄を破棄……の方向で、お願いします」

肩にある手に力を感じた。