「あっ、そうそう。先輩の隣にいるお客様。今日の企画者らしいんだけど、彼女、どうやら先輩に気があるみたいだよ」

気があるの言葉に、身体がピクッと反応してしまった。
それな私を見て、ニヤニヤと笑う雅哉くん。

「何も気にしてないからっ!!」 

身を乗り出して小声で言うと、雅哉くんに「はいはい」と窘められてしまう。

「でも遼さん、人当たりいいし話も面白いし、人気あるからしょうがないよ」

「う~ん、それはそうだけど。あの女性は本気で先輩を落とす気でいるよ」

カクテルを作り終わり私の前に出すと「ごゆっくり」と言って奥に下がっていった。
雅哉くんの姿が見えなくなると、また賑やかな声がする方へと目を向けた、その瞬間。
さっき言っていた女性と一瞬目が合った。そして得意げに笑顔を見せると、遼さんの腕に自分の胸を擦り付けるように寄り添い、頬が当たりそうなくらい近くに顔を寄せ始めた。。
あれって、私に見せるためにわざとやってるよね?

「ボディータッチが多過ぎでしょ……」

小さな声で呟く。そして彼女だけでなく、嬉しそうに笑っている遼さんにもイライラしている自分に気づいてしまった。
いくら店のマスターだとしても、誰にでも優しいのは罪だ。
そして、やっぱり綺麗な女性には、どんな男性も弱いと思った。

4年前、彼氏に振られた原因の学園クイーンも美人だったな……。

嫌な記憶が蘇る。