「いいんじゃないの?」

「そんな簡単に言わないでよっ。人の気も知らないで……」

そう言ってもニヤニヤ笑って私の顔を見ている枝里にだんだん腹が立ってきて、言ってはいけない一言を言ってしまった。

「枝里は私のことなんて、どうでもいいと思ってるでしょ?」

「はい?」

枝里の右の眉毛がぴくっと上がる。
それでも一度動きだした口が止まることはなかった。

「だから、そんな顔して笑っていられるんだよ。最低……」

「梓、あんたねぇ……」

「まぁまぁ、二人とも止めなって」

一触即発の危機を、真規子が制する。

「梓。今のはあんたが悪いよ」

「…………」

「そりゃ私たちは梓に比べたら素行も口も悪いけど、一度だってあんたのことを馬鹿にしたり、どうでもいいなんて思ったことないからね」

「……分かってる」

「じゃあこの場合、どうしたらいいか分かるでしょ? 子供じゃないんだから」

黙ったまま立ち上がると、深く頭を下げる。

「枝里、私が言い過ぎた。ごめんなさい」

「…………」

相当怒っているのか返事がない。心配になって顔を覗きこむと、デコピンされてしまう。

「いたーいっ!!!」

「これで許してあげる」

痛さでしゃがみ込んでいる私の肩を抱くと、そっと抱きしめられる。