「ところで梓。話って何?」

そうだった……。真規子のことで頭がいっぱいになってしまい、本来の目的を忘れてしまっていた。
しかも私の今をほとんど知らない真規子の前で“おためしの恋愛”の話をするのは気が引ける。それもたったの一週間で本気になってしまっただなんて、もってのほかだ。
さて、どうしたもんかと思案していると、何も知らないはずの真規子が突拍子もない事を言い出した。

「そんなに好きなら、その遼さんとかいう人と寝ちゃえばいいじゃん」

「遼さんとかいう人って……枝里っ!! またあんた、話しちゃったのっ!?」

バツの悪そうに舌を出し真規子と目配せすると、興味津々の顔をして身を乗り出してきた。

「どうせバレることだし、話しておいたほうがいいと思って」

「それはそうだけど……」

話には順序というものがある。枝里がどうやって話しをしたか分からないけれど、きっと一から十のうちの二も正確に伝わってないだろう……。
はぁ~と大きくため息をつき諦めたかのように真規子の方を向くと、ぼそぼそと話しだした。

おためしの恋愛を一ヶ月間することになった経緯。その時の契約内容。それからの毎日に、土曜日にあったこと。そして……

「遼さんに対する恋情が止まらなくなってしまったわけだ」

枝里にそう言い当てられ、小さく肩を落とした。