遼さんが用意してくれていた甘いココアが効いたのか、眠ってしまうことなく彼がお風呂から出てくるのを待っていられた。
部屋が暖まっているからか、スウェットパンツにTシャツ姿で現れた遼さんを見て、心臓がドクンッと音を立てる。
あの程よく付いている筋肉質な腕が好き。
普段での格好では知ることのできないその腕を、今は独り占めできる。
……って、私ったら、また恥ずかしいことを……。

「そんなまじまじと見て、俺の格好なんか変?」

変なことを考えて見過ぎてしまっていたのか、遼さんが怪訝な顔をした。
ヤバい……気をつけなきゃ。

「変じゃない、変じゃないっ」

慌てて、身振り手振りで否定する。
余程その動きが可笑しかったのか、大笑いする遼さんを横目でにらみココアが残っているカップを手に取った。
もう冷めてしまったココアを飲むと、ほろ苦さがやけに胸を締め付ける。
甘いココアだって、冷めてしまえば苦さが増す。
この恋だって、一ヶ月経てば甘さが無くなって、苦さだけが残ってしまうかもしれないいんだ……。
またも急に不安が押し寄せてきて、勝手に呼吸が乱れてしまう。
私のただならぬ様子に、遼さんが慌てて近寄った。

「梓っ、どうした? 苦しいのか?」

落ち着いて呼吸しろと、遼さんの声を聞きながら呼吸を整える。
背中を擦られ抱きしめられると、少しづつ落ち着きを取り戻し始めた。
そのままくたんと遼さんの胸に身を預けると、大丈夫だと言わんばかりに身体中を擦り出す。