身体の火照りが冷めたのを見計らって隣の部屋に行くと、トレーナーとTシャツを持って遼さんが立っていた。
「はい、梓。風呂沸かしたから、先に入っていいよ」
トレーナーとTシャツを渡され、呆然と立ち尽くしてしまう。
そ、そっか……泊まるんだったんだよね。お風呂のことなんか考えていなかったから、どうしたらいいのか分からない。
また、さっきの言葉が頭をよぎってしまい、身体中に緊張が走る。
何もしないって言ってるんだから、緊張する必要なんかないのに……。
「何ボーッとしてるんだよ。お風呂の入り方、分からない? 一緒に入ろうか?」
私の心を勝手に読んで、からかってるよねっ。
「遼さんの意地悪っ!!」
そう叫ぶと脱衣室に駆け込み、大きな音をたててドアを閉める。
リビングからは遼さんの笑い声が聞こえた。
「私、何子供みたいな反応しちゃってるんだろう……。恥ずかしい……」
溜め息ひとつ零すと、自分の家じゃないことに戸惑いながらも服を脱ぎ、バスルームへと入る。
遼さんらしく、バスルームもシンプルで綺麗だ。
使い勝手が分からないながらもパパっと身体を洗い終えると、バスタブに浸かる。すぐ横にある小窓から、星が瞬く夜空が見えた。
「キレイ……」
お湯に浸かったことで気持ちにゆとりが出来たのか、思わず言葉が漏れた。
しかし身体を動かし男性用のシャンプーが目に入れば、すぐに現実へと引き戻されてしまう。
「遼さんの部屋に泊まるんだ……」
ドキドキと不安。
今晩、私は、眠ることができるんだろうか……。