「や、やっぱり今日は帰ろうかなぁ……」
ベッドの上で立ち上がろうとしてバランスを崩すと、遼さんの元へと倒れこむ。
「これって、わざと?」
顔の距離が近すぎて驚き、プルプルプルと顔を振る。
「今晩は帰さないって言ったでしょ?」
チュッと音を立ててキスされてしまい、一気に体温が上昇する。
目の前の艶っぽい目に釘付けになってしまい、瞬きひとつできなくなってしまった。
くっきりとした二重に長い睫毛。アーモンド型の瞳が私を捉えて離さない。
吸い込まれそうになるのを、目を閉じることで食い止めた。
「何もしないよ……今夜は」
そう言うとベッドから降り、隣の部屋へと消えていく。
部屋でひとりになると、遼さんの最後の言葉を頭の中で復唱する。
-----何もしないよ、今夜は-----
情欲に満ちた声で囁かれた言葉に、全身が蕩けてしまいそうだ。
熱く火照った身体を、自分で抱きしめる。
たとえ一ヶ月の恋だとしても、私は遼さんに抱かれたい……。そう思ってしまった。
だって遼さんは言ったよね?
『二人の気持ちが高まればキスだってするし、それ以上のことだって……』
2週間前、私に向かってハッキリそう言った。
あの時は冗談でしょっなんて思っていたけれど、今は違う。
恋愛の楽しみを教えてもらうどころか、好きになってしまったんだから……。