「じゃあ遠慮無く言わせてもらう」

「どうぞ」

何よ、その余裕綽々な態度っ! 絶対に後悔させてあげるっ!!

「あの女の人が遼さんに色仕掛けで迫ってきたとき、嬉しそうにしてたのが気に入らない」

「うん」

「美人が好きなのも気に入らない」

「う、うん……」

頭をポリポリ掻く。やっぱり……

「帰ろうとした私を、力づくで引っ張っていった時の腕が痛い。遼さんの言葉ひとつに翻弄される……胸が痛い……」

最初の勢いは無くなり、聞こえるか聞こえないかくらいの消えそうな声で訴える。
とにかく何もかもが気に入らないんだ、私。
こんなんじゃ本当の彼女だとしても、鬱陶しいよね。
後悔させてあげるなんて言いたいこと言っておいて、自分が後悔するなんて……。

「ごめん、自分でも何言ってるのか分からなくなってきた」

小さく頭を下げると、その頭を撫でられる。

「梓が言ってることをまとめると、俺のことを好きって言ってるようにしか聞こえないんだけど?」

その通りだから仕方ない。
こんな風に気持ちを知られてしまうのは癪だけど、今さら嘘をついてもと正直に打ち明けることにした。

「好きです、遼さんのことが……」

今度は遼さんが目を見開いた。
そりゃ驚くよね。おためしで恋愛の楽しさを教えてあげるだけの女に、好意をもたれちゃうなんて……。はた迷惑な話だよね。