真輝ちゃんは、その努力なくしてウリエルの火を得てしまった。

たぶん今後、もちろん修練は必要になるだろうけど、魔法魔術の規格にないほど安易に、炎を操れるだろう。

「あ。……――ああ、そうか」

とそこで、なぜこんなに釈然としないのか、その理由を思い出した。声も出てしまう。

キーワードは火だ。本当に、まったく完璧に失念していた。

真輝ちゃんの食べ残しを、炭化するほど焼いたのはいったいだれなのか。それをすっかり忘れていたんだ。

真輝ちゃんは確かに火を宿した。だけど、それは当然、あの女を葬ったあとでだ。

仁のウリエルを吸収するきっかけとなった『食事』も、あの食べ残し事件のあと……。

となれば、真輝ちゃんがあの遺体に火を当てられるわけはない。

なにか知っているだろうか、確認しようと思っていた女も、真輝ちゃんがそれこそ天罰的熱量で葬ってしまった。礎もろとも、本当に一撃だ。

たぶん、あまりにも呆気なく女の本体が焼却され、あまりにも呆気なく戦闘が終了したことも、釈然としない理由なんだろう。

もしかしたらこういう状態を、人間では『理解が及ばない』とか『頭がついていかない』とか言うのかもしれない。