僕としては後者の、あの服装が強く印象に残るようなことがあの礎のそばであった、というほうがまだ説得力があると思う。

もっともそれで、じゃあその印象に残ることはなんだろうとなるとなおさら、さっぱりわからないけど。

振り返れば振り返るほど、本当に、なんだったのだろう、今回の事件は。

釈然としないのは僕ひとりだけか。

真輝ちゃんは藤岡悟と無事に接触できたし、仁はあの女を撃退できてよかったろう。ウリエルの火を掠め取られたのは不本意だろうけど。

さらに言えば、いくら藤岡悟の助けがあったからとはいえ、真輝ちゃんが無契約かつ不条理に火を吸収してしまったのは、その力を使う度に必ず代償を支払わなければならない魔法使いにとって、本当に不条理、不本意だろうけど。

ウリエルの火は、別に独占できるものじゃない。世界にはきっと仁以外にも契約している人物がいるはずだから、彼女に直接の損失はないはずだ。

でも、先天的能力や、魔法魔術の理念で扱える代償と報酬の公式が組まれない現象を、仁は嫌っている。

それは、羨望にも似ているのかもしれない。彼女は努力家だから、努力なき力が嫌いなんだ。