そんなひとりぼっちの僕から目を外して、

(それにしても……)

ぎしりと、背もたれを鳴かせてみた、ぎしぃ、ぎしぃ。ああ、なんか楽しい。

白々しい蛍光灯を見上げる。

節電しろ、と課長から言われたせいもあって、部屋の蛍光灯は僕の上しかついていない。しかも、二本セットの片方だけ。なんだろう、わびしい。

苦笑。

少し眩しくて、瞼を閉じた。手を頭の後ろで組みながら、さらに背もたれを鳴かせる。少しでも行き過ぎたら後ろへばたーんといってしまいそうだけど。

ぎしぃ、ぎしぃ。ああ、なんか楽しい。

(今回のこと、なんだったんだろう)

藤岡悟は思念体だった。

即身仏という特殊なタイプではあったけれど、仁が言うにはあの女も思念体の一種だ。

そう今回、鍵を握ったのはみんな、もう死んでしまっている人達ばかりだった。

生者が死者に振り回される。

生者が死者に命を狙われる。

生者が死者に命を救われる。

そういう事件だった。