そんなわけで、「朝には帰れません」ということを仁に伝えたんだ。そしたら今度は仁から苦言をバカスカ投げられるのだから、ちょっとたまったもんじゃない。

なんだろう、この板挟み。僕、そんなに悪いことしただろうか。結構がんばってるんだけど。

仁が言うにはなんでも、僕があまりに帰ってこないので、真輝ちゃんと一緒にファミレスへ行ったらしい。僕の部屋からお金を持って行ったそうだ。……まあ、仕方ない。

『ったく……明日の朝だけだぞ、いいな』

と、とりあえずでも了承してくれる仁の口調は、本当に機嫌が悪い。

彼女が出ているのは家の電話だ。固定電話はリビングを出てすぐの廊下に置いてある。冬じゃないから寒くはないだろうけど、深夜の廊下にいつまでも立っていたくないのは、だれだってそうだ。

そんな、大変不機嫌なところに悪いのだけど、

「あ、仁、待った」

もうひとつ、伝えなくてはならないことがある。