静かな裏路地。頭上で街灯がジリジリと鳴った。


「離してくださいよっ……!」

「テメェがキレさせたんだから、お詫びぐらいはしてもらわねぇとな」

「聞いて驚くなよ? 俺らは『青龍(せいりゅう)』の一員だぜ?」




*



【Haduki】

まずい、これはまずいことになった。


私の人生、どこで間違えたんだろう。それなりの生活を送ってきたつもりだったんだけれど。

お家柄、今ある状況もありえなくは無かったかもしれないけれど、幸い私は大丈夫だった。

だから、本気で驚いている。



説明しよう。

今、私の手首は体の後ろで縛られ、なんだかよくわからないが倉庫のようなところにいる。

外からは小さな音ではあるが、確かに波の音が聞こえてくる。海のそばなのかな?

……そして、一番驚くべきは……。


「嬢ちゃんよぉ、うちの組の一員にエラいことしてくれたなぁ」

「何の話ですか」


いかにも悪役っぽい、おっさん。と子分っぽい人たち20人くらい。私をここまで連れてきた男たちもいる。

にたにた笑いながら座り込む私を舐めるように見つめてくる。マジきもい。

っていうか……。


「……こんなにあからさまに悪い感じの人って、いるんですね」

「兄貴に何言っとんじゃボケェ!」

「いやいや、兄貴って今時使いませんよ、ハハ」


軽く笑ってみれば、目の前の男たちは額に青筋を浮かばせた。あ、いやな予感。


「……もしかして、また死亡フラグ?」


本日二度目のいやな予感は、すぐさま当たることになる。