「――――申し上げましては、これからの生活のなか、先輩や先生方に支えられながらではあるかもしれませんが、私たちの手で、より豊かな学園生活を築いていくことをここに誓います」


退屈、退屈、あぁ肩こりそう。
読み終わったとき、私は微かに顔をしかめた。
だが、直ぐに表情に微笑みをのせて前を見る。


――――赤い、もの。


体育館の後方。私立橘樹学園の在校生の座るあたり。

元々、目は悪い方ではない。でも、たとえ目が悪くても見逃さなさそうな、鮮烈な赤が、視界に入った。


その『赤』は制服を緩く着崩して、悠然とパイプ椅子に腰掛けている。赤の髪と、薄く光を反射する鋭い黒味がかった赤の瞳が見えた。

そのうち『それ』は、整った顔にニヒルな笑みを浮かべてこちらをじっくりと見た。


葉月は、自分の役割を全うしようと、静かに頭を下げて壇上から降りた。少なくとも、最初の登場以外には粗相はなかったと思う。

でも、確かにあの『赤』は嗤ったのだ。




『見つめてんじゃねぇよ、新入生代表』



なんて、静かに口を動かした彼に、興味がわかないわけでもない。