「う、動くな!」
私がニマニマしてるところで、さっきの好印象だったチャラ男くんが動いた。
うん、君はいい役してるよほんとに。
という具合に、私の首に後ろから腕を巻きつけ、首筋にナイフを当てた。
ナイフがカタカタと揺れるせいで、皮膚が薄く切れて血が少し、流れた。
「じゃーん、人質のポーズの完成」
「新入生代表、お前ホントに空気読めないのな」
「じゃあ助けてくださいよー、先輩は後輩に優しいもんですよ?ねぇ、『東雲先輩』?」
「……普通、女ってここで怖がらねぇか?」
「私も不覚にも同意見ですよ、若」
「俺と同意見がそんなに嫌か」
「嫌ですよ、何言ってるんですか」
まぁいい、と彼は薄く笑う。
色素の薄い瞳がギラギラ輝いている。肉食動物。
赤い髪が揺れて、先輩が走りだすとまるでモノクロだった倉庫は、
極色彩へと変わっていった。
ひとつめ、出会う。