バイクに乗ってきた男は、フルフェイスのヘルメットのせいで顔が見えない。
「あ……あれが、『東雲家』次期当主……」
近くで私を取り囲んでいる男の中の一人のつぶやきが聞こえる。
どうやら怯えているらしい。
しかし、声からしても次期当主というところからも相手は若いらしい。
巷で噂の『青龍』のメンバーが2人相手に怯えている?
「俺は東雲紅我。てめぇらが知っての通り東雲家の若頭だ」
「若、今日は自己紹介のために来たんじゃないんですよ。徴収です、徴収。早いとこ金をぶんどって帰りましょう」
「……ってなわけだ。契約期限は大分過ぎてる。きっちり100万と、利息780万、返してもらおうか?」
利息780万……。一体金利いくらなんだ……。
なんて考えが私の頭をめぐっていたが、かなりド派手な登場に私のアーティスト精神が高ぶっている!
さっきのチャラ男くんの表情も良かったけど、こっちもいいよ!
「さぁ、そのヘルメットを脱いでくれよ!」
だから声に出てるって言ったろ、チャラ男くんのつぶやきが小さく聞こえた。