【(Shinonome)】
「カラーギャングから、徴収?」
休日を満喫しようとしていた俺に、不幸な知らせが届いた。
「最近、勢力をあげている『青龍』というグループの借金返済日が、今日でしてね」
「どこも借金して楽しいのかねぇ」
「楽しい訳ないでしょう、馬鹿ですか若」
「馬鹿か、冗談だよ」
俺は、東雲 紅我(しののめ こうが)。
日本でも有数の極道の一家・東雲家の次期当主で、現在若頭。組の傘下である借金取りの組合でバイト中。
これが、俺の身の上。
*
「あのぉ、そこのオニーサン。暇?」
今日も素敵な土曜日。
茶髪で綺麗にカールのかかった髪の毛。真っ黒に塗りたくった目。必要以上に大きく見えるように彩られた目元。誘うように鼻をくすぐる香水。
「ちょっとぉ、聞いてる?」
「シカトってひどくないですかぁ?」
撫でるような声に甘えた瞳。
俺の目の前に可愛らしく躍り出た、女二人。
大学生か、それぐらい。
「わりぃ、今は仕事中」
「何の仕事してるんですかぁ?」
「かっこいいからモデルとか?」
冗談。俺はにやりと笑う。
右側に構えていた栗色の髪の女の腰を抱き寄せて、耳元で囁く。
「教えて、欲しいか?」
後ろから追いかけてきた、俺の部下がその様子を見ていたようでため息をつく。
聞こえてるぞ、くそ。
「……若、少々お戯れが過ぎるかと」
「うっせぇ。行けばいいんだろ、行けば」
抱き寄せていた女を放す。
女は赤い顔をしてぼぅっとしたままだ。ちょっと刺激が強すぎたか?
ひらひらと手を振って背を向ける。
「じゃあな、仕事は秘密だ」