「無料…レンタル…DVD?」


真っ黒なパッケージにはそれしか記されておらず、ディスクには、タイトルも何も印字されていない。

「何これ?」


…普通、パッケージとかにどんな内容かくらいかいてあるもんじゃないの?
まあ、無料レンタルっていうくらいだから内容はたいしたことなさそうだけど…―。

そう思い、手にとったDVDを棚に戻そうとした時だった…―。




「…お客様。」


「ひっ!!」

佐和子は思わず声をあげた。

いつの間にか、店員が自分の真横に立っている。

「こちらのDVDが気になりますか?」


細く、筋張った手で佐和子の手のDVDを示す。

口元は笑みを浮かべているのに、目は相変わらず虚ろなまま…―。


…やっぱり気持ち悪い。この人。

佐和子はそう思ったが、答えた。


「気になったわけじゃないんですけど…。タイトル以外何も書かれていないんで、何のDVDかな…って…―」


「レンタルされますか?」

店員がずいっと顔を近づけてきた。

その虚ろな目にとらえられながら、

「いや…もう、帰るとこなんで…。」


佐和子はしどろもどろに答えた。