雑貨屋で働き始めた美雨は意外にも、いや、むしろ今の生活の方が自分には合っていると満足していた

そもそも都会の流れは美雨には余りにも急すぎたのだ

少し下町にあるこの雑貨屋が自分にはちょうどいいと満足していた





ただ、1つ

心に引っ掛かるものがあった

それは

あれほどまでに愛した真山の事ではなく

あの日、口づけもせぬまま美雨を抱いたあの男の事だった

美雨は何故かあの男が気になって仕方がなかった


『何故だろう…』


自分でもわからなかった

ただ一度きり抱かれた男にこれほどまで自分の心が揺れているのが到底、理解できないでいた

と、同時に真山への愛はその程度のものだったのかと呆れてもいた