美雨は名も知らぬ男の寝顔を眺めながら愛しいと感じた

あまりにも無表情だった男が、眠っている時だけは、ほんの少し優しい顔に見えたから

同時に美雨はたった今、男との関係を精算した自分が

何故、名も知らぬこの男に愛しいという感情をもてるのか、全く理解できないでもいた



ただ、



何故か、この男を眠りから


深い
深い
眠りから


目覚めさせてやるのは


自分なのでは…


漠然とした思いが


美雨の頭の中を過った









不意に男が目を覚ました
起きたばかりで少しぼんやりとしている男の顔には何とも言えぬ色気あった

とても不思議な
決して
手を出してはいけないような
怪しくも美しい
そんな色気を
美雨は感じていた

男に色気を感じるなんてはしたないと自らを咎めつつも目を反らすことは出来なかった

その不思議な色気にやがて自身が溺れていくとも知らずに







そして、男は何もなかったかの様に美雨の部屋を後にした

もう会うこともないだろう

そう思うと美雨は少し眠ろうと目を閉じた