美雨の言葉には反して、男は静かにゆっくりと、まるで繊細な絵画を描くように丁寧に美雨を抱いた


美雨にとって二人目の男


ついさっき、美雨に誓約書を書かせた男


名刺を貰ったけどちゃんと見ていなかった


だから名前も知らない


やけに無表情な男


そんな男に


真山の痕跡を消したくて抱いて欲しいと

激しく壊れるくらいめちゃくちゃにして欲しいと頼んだ見ず知らずの男に







美雨は満たされていた


不思議な事に


心が満たされていた


ただ


一瞬でも


この男に


溺れてしまうんじゃないかと思った美雨が


冷静さを失わずに済んだのは


男が最後まで美雨に口づけを落とさなかったから


男はあまりにも優しく美雨を抱きながらも決して口づけを与えなかった