「お母さんもね
随分と年を取ったわ
もちろん、まだまだ現役で一ノ瀬の家を
守ってるけどね
ある時、言ってたの
あなたが出ていって暫くしたとき
少し厳しくし過ぎたって」

杜は思い返していた
血の繋がらない継母に
二度と笑うなと言われたことをーーー

「お母さんね
後悔してるって
家を守ることに必死で幼かったあなたに
ひどいことを言ったって
ねぇ、杜
私からもお願いするわ
お母さんを許してあげて欲しいの」












杜は新幹線のホームで
電車を待ちながら、さっきまでの事を
もう一度、思い出していた

そして
ゆっくりとホームに電車が入ってくると
乗り込み、指定の窓際の席に座る

別れ際の言葉を思い出す

「杜、これからもあなたを愛してる
ただし、家族として
大切な弟としてーーー」

笑顔でかの子はそう言った
その笑顔を見て杜は
漸く、長く苦しかった初恋が
終わったのだと知った

杜は目を閉じると、少し眠ることにした
まだまだ、やらなければいけないことのために