成人式も終えて落ち着いた二十歳の俺は初めての「同窓会」という場面に立っていた。


夢を追い上京した俺は成人式を東京で済ましていた。

そのせいだろうか変な緊張をしているようだ。


でも上京したのは俺だけじゃないはず


少なくとも一人昔から何かと優等生の「モトヤ」がいる。


「モトヤ」というのは名前ではなく苗字で本名、「元矢 公一」


みんなも「モトヤ」で呼んでいたような気がする。


俺はモトヤというほど仲がよくなかった


というより立場が違った。

モトヤはクラスでも人気があって授業中とかにも


バカなこと言って笑いをとるような奴で


俺は中の下クラスのさえない奴ら(友達には悪いが)とつるんでいた。


「そういういえばモトヤのヤツも成人式は帰ってないな」


しかし


遅刻気味の俺にはろくな思考もきかさずに会場へと急いだ。


その会場というのもホテルの会場の一室を使ったやつかなんかで大分豪勢なものらしい


受付を済ませ扉を開けた。

開けた瞬間に懐かしい顔ぶれが俺を見ている。


訳もなく「しまった」と心の中で呟いた。


すると


「ようコータ久しぶり!」


「なんで帰って来なかったんだよ」


「青山くん変わってないね」


(まだ二年ちょいしか経ってねぇんだからそこまで変わんねぇだろ)


という屁理屈地味た突っ込みよりも


先に意外な仲間たちの言葉に


勢いで涙が出そうになった。


にぎやかな輪の中に入るやいなや


来るまでモトヤのことを考えすぎていたせいか


モトヤを探していた


が見るかぎりモトヤの姿はなかった。


「モトヤまだ来てないの?」


「いやさっきまでいたけどな」


高校時代の友人の水田に聞いた。


水田もなぜ俺が急にモトヤのことを聞いたのか不思議そうだが


今はもう東京についての質問攻めのこの優越感がとてつもなく心地よかった。


なぜかすっかり天狗の俺は

照れ隠しに手当たり次第に料理に手をつけていた。