歩道橋を渡り早足になりながら
自転車置き場へと向かう。

「ねぇ、杏ちゃん、だよね?」

ビクッとして振り向くと、そこには
絵にかいたようなヤンキーがいた。
太一だ。
何度も言うが、太一のことは知らない。
初対面である。

「…はい。」とだけ答えた。

帰ろうとすると、
「鈴木から名前聞いた。」と。
鈴木とは春菜の苗字である。

私はまた「はい。」とだけ答え、
自転車にのり、いつもは自転車を
ひいて帰る上り坂も立ち漕ぎで
帰ったのを今でも忘れない。

帰って、早くお風呂に入ろう。
久しぶりに男性に話しかけられた
動揺と気恥ずかしさと寒さで
耳がまっかになっていた。