走り込みを終え、駅までまた走る。
田舎の学校なのでこの電車をのがすと
また30分以上はまたなければ
ならない。

息を切らし、ぎりぎり電車に
とびのった。

時間は午後6:30。
帰宅ラッシュの電車の中は暖房が
きき、さっきまで息をきらしていた
私にとっては蒸し暑かった。
不意に携帯をカバンからとりだそうと
すると、

「杏!」と甲高い声で誰かが私を呼ぶ。
クラスメイトの春菜だ。
「また部活〜?たまには遊ぼうよ!」
春菜は俗に言う"ギャル"だった。
今だから言えるが私はあまりギャルは
好きではなかった。
仲間はずれにされたくないから
必死に見た目を派手にし、友達と
つるんでいる連中。
何故か当時はそう思っていたからだ。

なのに私は
「そうだね!遊ぼう!」と返す。
結局のところ、どう思っていようと
私だって一人は恐いのだ。

春菜は飽きることなく相槌を
打つだけの私に彼氏のことや
友達のことをひたすら話す。
適当に返事をしながら
早く駅につかないかなぁ、などと
色々なことを考えていた。

すると、急に春菜の話が途絶えた。
みると濃いアイライナーを塗りたくった
目を見開いて右斜め前方をみている。
すると
「あ、やっぱり太一だ〜!」と言い、
私の方をみて行こう!
と言わんばかりに目を見開いている。

右斜め前方にはいかにも"ヤンキー"
と言う言葉を絵に書いたような
一人の男がいた。
制服からして同じ高校らしいが
私は知らない。

前記のように、私はギャルがあまり
好きではない。と、同時に
似た系統のヤンキーもあまり好きでは
なかったし、なにより男性への
人見知りが異常なまでにあったのだ。