「あたし、ずっと聞きたいことあった」

さっきまで奏でていたギターの音色を止める。

「時々…悲しそうに歌ってたり、泣きそうな目をするのはなんで?」

葵はジャージの腕を捲って手首をあたしに見せた。そこにあったのは、一筋の深い深いまるで自殺未遂の痕みたいな傷。

聞いたことはあったけど実際、目にしたのは初めてだった。

「あたし、リスカとか分かんないけど。痛かったんだね。辛かったでしょ?」

傷痕に手を伸ばして触れる。葵はただ悲しそうな目をしていた。

「ちょうど14の時くらい、かな。その時付き合ってた彼女が居て…

病気とか発症して何もかも嫌になってた時、彼女が何か狂いだして…精神病とかで入院繰り返してて…

俺そいつのことめっちゃ好きで、もう分かんなくなって…で、

15の誕生日迎える前に自殺した」

葵が何時も笑ってるのは過去の傷からだったんだろう。あたしはもう何かを言うことは出来なかった。