……またこの人は訳のわからんことを。
ちら、と辻宮を見てから、はあ、とため
息をついた。
「あんまりそういう事言ってると、キス
魔だと勘違いされますよ……」
「美里限定だし。好きな女とキスしたい
って思うのは、普通じゃねーの?」
そんなことを、なんの前触れもなく、事
も無げに言うんだから困る。
やめてほしい。翻弄するのは。
「……車のなかですから」
そう言って近づいてきた辻宮の唇を手で
追いやると、つまらなそうに辻宮が元の
態勢に戻った。
はぁ……家に帰りたい。
やがて連れていかれたのは、お洒落なカ
フェだった。
「ここ、お気に入りの場所なんだ」