家に逆戻りしても、またテンパったお父
さんの相手をするだけだと悟った私は、
そのままドアの前で辻宮を待つことにし
た。
それから十分後。
「……あ、来た」
やけに存在感を放つ……悪く言えば、浮
いてる、黒塗りの車が向こう側からやっ
て来た。
こんな所であんな車乗り回す知人なんて
、辻宮以外に……あ、居ることには居る
か。
ふと、瑠璃や繭を思いだし、あの二人も
パートナーと出掛けたりするんだろうか
と思っていると、車が目の前で止まった
。
そして……、
「美里、乗れ」
やっぱり乗っていたのは辻宮だった。
「おはようございます、ご主人様」と、
ありきたりな挨拶をしてから、車に乗り
込む。
「もっとこっち寄れ」