自分でも可愛くない悲鳴だなあ、とは思
うけど……今はそんな気にする余裕もな
いっ!
「痛い!痛いですってご主人様!い、痛
……痛いっつってんだろ!」
「あれ、ご主人様にそんな口の聞き方で
いいのか?」
「すいませんご主人様!お願いですから
離してください!」
心のなかでは、"この悪魔!"と悪態つき
ながらも、そう許しを請えば、ふわりと
緩む拘束。
ふう、と息をつく暇もなく───今度は
所謂、お姫様抱っこなるものをされた。
「え!?ちょ、なに!?」
「じたばたすんな。ドレスに皺がつく。
いくらすると思ってる」
そう言われては、自然と動作も止まる。
あんだけ金にずぼらな……少なくとも自
分にはそう見える辻宮が、"いくらする
と思ってる"なんて。
やっぱり高かったんだこのドレス!
それはもう、庶民の私じゃ想像もつかな
いような金額で。