───今、誰に話しかけられた?



まさか、とは思いつつ、後ろを振り向こ
うとした所を、後ろから抱きすくめられ
た。



「ひぁっ!?」



その背後からの突然の温もりに、ビクッ
と体が跳ねる。



そんな私を、そいつはクスッと笑った。



「抜け出すって、どういうこと?美里」


「ご、ご主人様……」



首を捩るようにしてその姿を確認すれば
、やはりそれは想像していた通り、辻宮
だった。



にっこりと微笑んで───だけどそれが
どこか黒いオーラを醸し出しているのは
気のせいなんかじゃないと思う。



「なに?俺から逃げられるとでも思って
んの?」


「───痛い痛い痛い痛い!」



それまでやんわりと腰に回されていた辻
宮の腕が、ギリギリと力を加え締め付け
てきたから悲鳴を上げる。