「とりあえず乗れよ」


ハッと我に返った様に視線を向けると、目の前にあるのは原付。

学校から少し離れた所にある空き地に、数台の原付があって、その中の一台に男は跨った。


「え?」

「だから乗れって」

「どうやって?」

「どうって、ここ」


男は自分が座る後ろに指差す。

しかも全然、乗れるって感じじゃないくらいのスペース。


「いやいや、乗れないでしょ」

「乗れるだろーが」


そう言って急かす様にポンポンと座席を叩く。


「つか、あたし捕まりたくない」

「は?」

「ニケツで捕まりたくない」

「あー…大丈夫。危ない道通らねぇから」

「そー言う問題じゃなくない?」

「まぁ、とにかく急ぐから早く早く」


またもや強引にあたしの腕を掴んだ男。

だけどそれに従って後ろに座ってしまったあたしも、あたしだ。



…今日は、調子が狂う。