「なぁ、思ったんだけどさ、お前最近化粧してねぇだろ」
ジッとあたしの顔を見つめながら身体を起す颯。
あぁ、分ってんだ。
「してないって言うか薄くなっただけ」
「あー…あれか。まだ引きずってんのか、前の男」
「そんなんじゃない。もう吹っ切れてるよ」
「へー…」
「え、何?やっぱ変?」
スッと颯に顔を向けると、咥えたタバコに火を点ける所だった。
「いや、別に。そのほうがいいけど」
そう言って火を点けたタバコの煙を口から吐き出す。
「そのほう…が?」
「ほら、あれだあれ。お前、化粧したらキツクなるからな」
「そっか」
ここに来るといつもどうでもいい会話。
だけど、それが何だか妙に落ち着くのが不思議。
「あー…でだな、」
そこまで言って言葉を継ぐんだ颯。
ちょっと言いにくそうなその表情に思わずあたしは首を傾げる。
「何?」
「ま、いいや」
「は?何それ!そこまで言ったんだったらいいなよ。気になんじゃん」
「や、別に」
そう言ってタバコを咥えた颯に眉を寄せた。