「おーい、怒んなって!」
歩幅を速めた颯はあたしに隣にピタっと寄りつく。
そしてあたしの顔の前に現われた颯の顔は憎いほど微笑んでた。
「ちょっとモテてるからって…」
「美鈴の方が人気あんじゃん」
「別に嬉しくない」
「ほら、冷たい」
「無関心なだけです」
「俺も同じ。っつーかさ、お前、香水つけてんだろ?」
不意に言ってきた言葉。
足を止めて颯を見上げると不思議そうにあたしを見下ろしてた。
「それが、…何?」
「つけねぇほうがいいぞ」
「何で?」
「変な男が寄りつくから」
「何それ。ってか、もう寄りついてますけど」
嫌味ったらしくほほ笑むと、颯は一瞬眉を寄せる。
「それって、俺か?」
「さぁ、どうでしょう…」
「図星みたいな言い方すんな」
「って言うか、そっちだってつけてんじゃん」
「俺は男だからいいんだよ」
「まった、意味不明だよ。ホントに」
呆れてため息をつくと、颯はハハっとあどけない笑いを見せた。
こー言う、悪の噂男とはギャップのある笑いに、何故か心が揺れる事がある。
スキとかそー言う感情じゃないけど、自分でもよく分んない感情が芽生える。
あたし…おかしいかも。